あるある!産業廃棄物処理業界の特殊性と不適正処理

 

【産業廃棄物処理業界の特殊性とは?】 

 


1.お金とものが同一方向に流れる

 

 通常、商品やサービスの対価として料金が支払われ、ものは金銭と逆方向に進みます。
ところが、産業廃棄物業界では「お金とものが同一方向に流れる」という特殊性があります。
 産廃処理業者が廃棄物の処理というサービスと同時に、代金を受け取る側が廃棄物を受け取ります。
ものに金銭がついてくるので、処理費という代金を受け取りながら廃棄物を処理しないで、どこかへそのまま捨ててしまう業者が出てきます。

 処理しないで転売したり投棄してしまえば、処理費もかからないし代金がそのまま儲けとなります。
  
 自前の処理施設を稼働させたり、外注の処理施設に持ち込んだりしませんから、大幅に利益が向上します。

施設の処理能力以上の産廃処理を請け負っても、投棄や転売してしまうのですからこんなおいしい商売はありません。
もちろん違法行為であることは言うまでもありません。

 数年前、大手カレーチェーン店での廃棄物処理業者が起こした、食品廃棄物不正転売事件は、この典型的な事件でした。
安い処理料金で請け負った業者が、利益を出そうと転売を繰り返していました。

 排出事業者は廃棄物処理の「お金とものが同一方向に流れる」という特殊性を、十分認識して廃棄物の処理を委託しなければなりません。
製造から処理までが製造工程であるという認識です。

 

2.1社で処理完結は難しい

 

 廃棄物処理業界では、処理を1社で完結するのが極めて難しい,という点があります。

 1社で中間処理施設から最終処理施設まで、一括で処理できる施設を持っている業者は珍しいと言えるでしょう。多くの場合で中間処理後の残さ物は、二次処理業者に委託します。

 廃棄物処理コストの大部分を占めるのが二次処理コストです。一次処理業者は二次処理コストが安ければ安いほど利益が増えるので、少しでも安い二次処理業者を見つけようとします。

 つまり二次処理では、中間処理業者にも処理コストと委託リスクが発生することになります。
このことは一次処理業者が適正に処理を行っても、二次処理業者の過程で不適正処理をする危険性があるということです

 産廃業界での二次処理業者の選定には、習慣やなれ合いが否定できないので、定期的に見直しや担当替えといったことも必要になります。

 

3.ものをなくすという意識

 

 製造業ではものをつくります。つくったものを売ることで利益を発生させます。

売るためには、品質や値段、外部の評価を高めなければなりませんね。同業者の同等商品と品質が同じで、安ければ売りやすいでしょう。

 しかし、廃棄物処理業界では、ものをなくすことが仕事になります。品質はもはや関係ありませんから、処理するコストだけに焦点が当たります。


 ですから、産業廃棄物処理業界は価格のダンピング競争に巻き込まれやすい業界なのです。

 排出事業者も当然「ちゃんと処理してくれるなら,できるだけ安い方が良い」考えますよね。


ここには「品質は関係ないのだからできるだけ安くしてくれよ」というプレッシャーが含まれています。

 経営がおもわしくない処理業者に、あふれるほどの廃棄物が集まってくる理由です。

 製造から処分まで、なくすことにも適正な費用をかける必要があることを、製造業関係の排出事業者には十分に認識してもらいたいものです。
 

 

 

 

 

 


【不適正処理の兆候を見分けるポイント】


 排出事業者は任せっきりにしないために、自分が出した廃棄物が最終処分される工程を確認しましょう。
それには、廃棄物処理業者の施設での保管状況、処理フロー、稼働状況をチェックします。

 担当者であるあなたは、自治体が発行している「現地確認チェックシート」か、自社で作ったチェックシートを持参して、 廃棄物処理業者施設へ出発します。

 まず法律面のチェックをして,許可証や契約書、マニュフェストなどの書面を確認します。

現地確認でしっかり見てもらいたいのが、保管状況と処理施設の稼働状況です。

 


1.現地確認:保管状況

 

 保管状況は不正処理の兆候を見分ける1番のポイントです。
前述したように、廃棄物処理業の特徴は、お金ともの(廃棄物)が同一方向に流れる、でしたね。

 そのため、経営状況が悪い廃棄物処理業者は、多量の産業廃棄物を受け入れ、その廃棄物を排出しなくなります。 
排出するにはお金も発生するので、ため込むだけため込んでしまいます。

 過剰に廃棄物が保管されている廃棄物処理業者は、非常に危険な状態と思ってまず間違いないでしょう。

 

■現地入りする前に、必要書類をまとめておく

 でも、どこまでが適正保管でどこからが過剰保管なのか、現地に行っただけでは実際はわかりません。確認資料がないと、適正か過剰か判断できないからです。

 許可証に保管の上限が記載されている自治体もありますが、現地確認の前に確認が必要なのが、許可申請書です。

 許可申請書には保管量や保管状況図が、通常記載されています。
廃棄物処理業者から事前に提出してもらって、現地状況と比較するのです。

 廃棄物処理の委託には、常にリスクがついて回ります。
リスクを減らすには、現地確認が1番です。ただ漠然と現地確認しても、問題は何も見つけられません。

 事前の資料収集がとても大事になってきます。

 


2.現地確認:処理施設の稼働状況

 

 以前、八王子市の排出業者が多摩地区の現地確認するときに同行したことがあります。


なんと処理施設の大半が故障していて、電源さえも接続していない状況にはびっくりしてしまいました。

 廃棄物は許可証どおりに受け入れています。
その受け入れた廃棄物のほとんどが処理されずに、別の処分場に再委託されていたのです。

 その処分業者の場合、再委託先が許可を持った処分場であったため、大きな問題になっていませんでした。もし不法投棄されていたとしたら,大問題となっていたでしょう。

 ここまで極端な事例でなくても,実際に稼働していない施設は、よく見受けられます。

 現地確認に行ったら、施設が実際に稼働しているか、許可証の能力どおりに処理ができるかどうか、必ず確認してください。
実際には焼却できない焼却炉が存在するんです。

 現地確認を数回してみて、一度も稼働していない廃棄物処理業者は非常に危険です。

 

■処理施設チェック項目まとめ

 

・設置されている施設の大半が故障?
・焼却炉の排煙ダクトが、設計図どおりに配管されていない
・いつの間にか無くなっている廃棄物の山
・最終処分場の隣に穴がある

 

 廃棄物処分業はグレ-ゾーンばかり、という指摘をよく耳にします。
しかし、法律にグレーゾーンはありません。

 「このくらいなら大丈夫」といった甘い考えはあり得ません。
これからの未来は、環境に配慮した企業しか生き残れません。

 許可を持っていない処分業者に、けっして廃棄物の処理を委託してはいけません。
そこからです。