事件・事例から見る廃棄物処理の問題点
1.カレーチェーンが排出した廃棄物の不正転売事件
本来ゴミとして処理されなければならないものが、食卓に並ぶという信じられない事件でした。その後行われた県の調査では、不正に転売された可能性のある有名企業の食品廃棄物が、100種類以上も見つかりました。
この事件の一番の原因は、ゴミ処理が完了したと虚偽の報告をした廃棄物処理業者のモラルの欠如・無さである。ゴミ処理をしないで転売していたんです。
一方、その廃棄物処理業者に有名会社の食品廃棄物が、なぜたくさん集まってきていたのか疑問に思う人が多かったと思います。
その後の調査でこの処理業者が、かなり安い価格で処理を請け負っていたことがわかりました。
根底にはゴミはゴミで価値がなく、できるだけ安く処理したい排出事業者のネガティブな考えと、責任の無さがありますね。
2.廃棄物処理の原則は
日本のゴミの処理方法を定めた法律「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)では、廃棄物を発生する会社(排出事業者)が、自分のゴミを処理することを原則としています。
例えば、建設工事では→産廃が出たら→排出事業者(元請業者)が自分で処理することが原則ですね。ここがいまいち理解されていない根本の考え方です。
しかし、自分で処理することができない場合は、廃棄物処理のプロの廃棄物処理業者に委託することが認められています。こちらが例外です。わかっているようで理解していない会社があります。
委託するには細かな決まりごとがあります。廃棄物処理法で決められているように、排出事業者は「許可をもっている業者と契約書を交わして、委託のたびにマニフェストを正しく使用しなければなりません。排出事業者は契約しないと当然ですが罰せられます。
さらに、自分が出した廃棄物が最終処分されるまでの工程までを確認しなければなりません。 確認を怠った場合には、道義的責任を問われることになるでしょう。
この責任は一見軽いようですが、インターネットやSNSが主流の現代では、社会的制裁・炎上することにもなりかねませんね。
この処分の「委託契約書」は絶対的記載事項というものがあって、実務的にはなるべく作り変えない方が無難だと思います。
また、産業廃棄物管理表(マニュフェスト)の処理日予想記載などは、虚偽記載となり許可取消処分の対象となりますから特に注意が必要です。
この事件で、法律の規定を守り書面上の手続を行っていたとしても、思いもよらない形で自分が出した廃棄物が不適正に処理されることがあるということを、多くの排出事業者が気づかされました。
「廃棄物は委託したら責任終了ではない」「廃棄物を出した者として、最後の最後までその処理に排出事業者は責任がある」ということを、排出事業者は再認識することになったのでした。
3.排出事業者が委託排出事業者責任を問われた食品廃棄物不正転売事件
1の大手カレーチェーン不正転売事件に、続いてしまったのがこの事件でした。
大学幹部職員が無許可で一般廃棄物収集運搬を行わせたとして、廃棄物処理法違反で逮捕されました。これも平成28年に起きた事件で、当時のテレビ・新聞報道で残念な話題となってしまいました。
排出事業者が逮捕される多くは「不法投棄」であり、この事件のような「委託基準違反」での逮捕はまれなことでした。
先ほど学んだように、廃棄物は原則自分で処理しますが、自分が処理することができない場合は例外として、許可を持つ処理業者に委託することができますね。
許可を持たない業者に廃棄物の処理をさせることは、すでに理解した廃棄物処理法違反です。
自分で処理できない廃棄物排出事業者が最初にしなければならないことは、その廃棄物を正しく運搬・処理できる許可を持った廃棄物処理業者を見つけて選択することです。
業種が限定される廃棄物には特に注意!
産業廃棄物収集運搬業許可を専門とする行政書士としての注意点ですが、業種限定とは例えば、建設業と飲食業では同じゴミを処理するとしてもその扱いが違うということです。
それと、産業廃棄物としての廃棄物の種類で注意しなければいけないのが、アスベストや水銀含有廃棄物です。
市町村によって対応が変わるのが、事業所が出す廃プラスチックゴミで、原則産業廃棄物になります。
これにもやはり例外があって、市町村によっては小規模事業者が出す事業系廃プラは有料ゴミ処理券で処理できる場合があります。ややこしいですね。専門家や市町村におたずねください。
もう少しおつきあいください。
処理や処分も1社で完結しないのが、産業廃棄物収集運搬業許可の特徴でもあります。
・産業廃棄物収集運搬業者
・中間処理業処理業者(破粋)
・中間処理業勝利業者(焼却)
・最終処分業者(埋立)
などが活躍します。
出典:「廃棄物処理の正しいルールと実務がわかる本」
行政書士 髙橋敏行 行政書士 石下貴大 共著