やりがちな「ゴミ収集員」「介護職」への評価

 

 そもそも廃棄物とは何なのか(産廃収集運搬業)


 皆さんは、最近エッセンシャルワーカーと呼ばれる、ゴミ処理業者さんや介護支援の介護職の方々を地位や給料の低い仕事としてみていませんか。

 

 実は所長も、知らず知らずに少し偏見を持ってみていた時期がありました。
でも、少し考えてみてください。

 

 流行のSDGsやESG経営、少子高齢化とカーボンニュートラルを提唱した日本において、ゴミ処理業者さんや介護職員さんは、なくてはならない大切な職業の方々です。

 

重労働で汚れる大変な職業のわりには、賃金が安すぎますよね。
介護に直面している年代の所長は、特に声を大にして話したくなります。

 

 なぜって、これからの日常生活や経済社会を支える方々でもあるからです。

 

 

1.日常生活でも仕事でも、必ずゴミは出ます。

 


 私たちが生きていくときに、必ず発生するのが「ゴミ」です。
日常生活で出したゴミは、住んでいる市町村のルールによって、決められた曜日に決められた方法や場所に出しておけば運んでくれますね。

 

 しかし、仕事で発生させたゴミは,簡単には持っていってくれません。
『産業廃棄物処理法』では「事業活動に伴って排出される廃棄物は、事業者の責任によって処理する。」となっているからです。

 

ですから、家庭ゴミの感覚で産業廃棄物を処理してしまうと、事件になってしまうこともあります。

 

 

 

 

 

 


2.廃棄物処理法の移りかわり

 


 廃棄物処理法の前は、昭和29年の『清掃法』、もう一つ前が明治33年制定の『汚物掃除法』といいます。廃棄物処理法ができるまでのゴミ処理は、清掃法で汚物処理として処分されていました。



 ところが、日本の経済活動が活発化して、大都市を中心に大量の産業廃棄物が出されるようになりました。そうなると、人々の生活環境を汚染するようになってきます。
いままでの清掃法では対応できなくなってきたのです。

 

 そういうわけで、環境関連法の整備がなされ、清掃法が大幅に改正されることになりました。


事業者の産業廃棄物の処理責任を明確にして、産廃の体系化された処理方法が整備確立しました。公衆衛生の向上や生活環境の保全を図る目的として、『廃棄物処理法』が制定されました。

 


3.排出事業者の責任が、廃棄物処理法によって明確になった

 


 廃棄物処理法の目的は、大量で危険性が高く環境汚染の可能性が高い、産業廃棄物の処理責任を明確にすることにありました。

 

 日常生活で発生する一般廃棄物と、事業者が事業活動によって発生させる産業廃棄物の処理責任を、明確に区分してその処理体系を整備しました。


このように、廃棄物処理法では制定時から、排出事業者の処理責任を明確にしています。

 


4.自分の出したゴミを知る

 


 そもそも廃棄物は何なのかを知ることから始めましょう。

 

 排出事業者が不適正処理や事件に巻き込まれないようにするには、前述の廃棄物処理法をしっかり理解することです。


ですが、専門家でも難解な廃棄物処理法の条文を、隅々まで読み込むのは時間もかかりますし現実的ではありません。

 

 事業者が一番気になっているのは「自分が出したゴミがちゃんと処理されているかどうか」ということだと思います。

 

そのためには、自分の出したゴミがどんなもので「最低限これとこれを知っておけば事件に巻き込まれることはない」という範囲のことを、なるべく簡単に説明していきましょうね。

 


5.廃棄物とは

 


 廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に大きく分けられます。

少しかたぐるしくなりますが、廃棄物処理法では、「廃棄物の定義」をこのように定めています。がまんしてくださいね。

 


『第2条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう。』

 


廃棄物とは通常「不要なもの」であって、「ゴミ」とはいらないものです。 ではいるものといらないものとの、判別はどうすればいいでしょう。

 


6,廃棄物かそうでないかの判断は

 


 最近では、「自分には必要ないもの」なんだけど、誰かが必要としてくれたり、リサイクルやリユース できるものが増えてきました。


たとえば、缶ビールなどのアルミ缶です。

 

 普通仕事終わりに飲むビール缶は、ゴミ箱行きがお定まりです。
しかし、アルミ缶も大量にまとまると、必要な人が買い取ってくれます。

 

ということは、あなたにとってアルミ缶は「廃棄物」ですが、利用したい人にとっては「廃棄物でなく「有機物」になるというわけです。

 

 廃棄物かどうかの判断基準は、①売れるかどうかで、②出す側がそのものをどのように考えているかということになります。

排出業者がこれは廃棄物と考えていれば廃棄物で、買ってくれる人がいるから廃棄物ではないと考えていれば、廃棄物ではなく有機物で売り物となります。

 

 

 少し大きく広げて考えると、「商品となった資源の再利用や、余った商品や食品を足りない地域に運ぶ」などはESG経営そのものですね。

 

そうなんです。一般廃棄物や産業廃棄物を処理してくれる「一般ゴミ収集員さん」や「一般廃棄物収集運搬業の許可」を持つ業者さんは、我々の生活を支えてくれているエッセンシャルワーカーであり、環境ビジネスの担い手なんです。

 

 

 

参考: 『廃棄物処理の正しいルールがわかる本』高橋俊行・石下貴大