産業廃棄物収集運搬業の契約書には多くの種類があり、その都度疑問が浮かび上がってくる方も少なくないでしょう。そこで今回は、産業廃棄物収集運搬業の契約書について分かりやすく紹介していき、よくある疑問も解説していきたいと思います。現在委託契約書の作成に困っている方や、収集運搬契約で困っている方は、この記事を参考にしてみてくださいね。
産業廃棄物収集運搬業の委託契約書とは?
はじめに、産業廃棄物を収集運搬するにあたってよく結ぶ「委託契約書」とは何のことなのかについて詳しく解説していきます。委託契約の意味や基準を知り、正しい知識を身に付けましょう。
委託契約の意味
法律上では廃棄物処理業者について、「事業者はその事業活動において発生した廃棄物を、自らの責任において適切に処理する義務がある」と定められています。しかし産業廃棄物は大型の物も多く、自社で適切に処理することが難しいのが現実です。
そこで次の項目で紹介する6つの基準を満たしている業者に、自らの責任において廃棄物の処理を委託するのです。つまり委託契約とはあくまで依頼してきた業者に責任があり、委託された業者には責任はないという契約ということになります。
委託契約の6つの基準
それでは委託契約書を取り交わすために満たしていなければいけない、6つの基準について見ていきましょう。
- 産業廃棄物処理業(収集運搬業を含む)の許可を持つ業者に委託すること。
- 廃棄物の処理状況を確認すること。
- 許可の範囲内のみ委託すること。
- 処理契約書を作成し締結させること。
- 特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合は、あらかじめ必要事項について委託先業者に文書で通知しておくこと。(数量・種類・性状などについて)
- 締結した契約書はその日から5年間保管しておくこと。
以上を満たした場合のみ、自らの責任をもって廃棄物の処理を他の業者に委託することができるのです。そのため委託される側の立場であっても、基準をきちんと満たしているのかを確認することが大切になります。
産業廃棄物収集運搬業委託契約書の作成方法と流れ
続いては、産業廃棄物処理に関する委託契約書の作成方法と、締結するまでの流れを紹介していきます。これから委託契約を結ぶ予定がある方は、ぜひこちらの項目をチェックしてください。
委託契約書の作成方法と注意点
まずは、委託契約書に記載する内容を分かりやすくまとめたので確認していきましょう。
- 委託する産業廃棄物の種類や数量
- 委託契約の有効期間
- 受託者が許可を得ている事業の範囲
- 委託者が受託者に支払う金額
- 委託者が有する適切処理のために必要な事項(性状および荷姿・他の廃棄物と混合することで生じる支障・通常の保管状況下での腐敗や性状の変化・石綿含有廃棄物または特定産業廃棄物・日本工業規格C0950号に規定する含有マークの表示などについて)
- 契約期間中に前項の情報に変更があった場合の伝達方法
- 委託業務終了時の受託者から委託者への報告方法
- 契約解除時に処理されない産業廃棄物の取り扱い方法
- 運搬の最終目的地の所在地
- 積み替え保管を行う場合の積み替えや保管を行う場所
- 積み替え保管場所で他の廃棄物と混合することの許否
- 処分または再生を行う場所とその方法および能力
- 最終処分地の場所とその方法および能力
- 輸入廃棄物についてはその旨
以上を委託契約書に記載しなければならず、契約は必ず二者契約でなければいけません。そのため委託者は、収集運搬業者と処分業者のそれぞれと契約書を締結させる必要があります。また、委託契約書は原則書面で交わさなければならず、記載内容に変更が発生した場合についても書面で行いましょう。
委託契約書締結までの流れ
次に、委託契約書を締結するまでの流れを簡単にまとめたので見ていきましょう。
- 処理業者の許可証を入手する
- 委託する業者を実際に確認しに行く
- 契約書を作成し締結させる
- 契約書は5年間保存する
委託契約を締結させるには最初が肝心となっており、きちんと許可を取得している業者なのかを確認すると同時に、廃棄物を処理する能力があるのかを見極めることが大切です。
収集運搬契約でよくある疑問
①運搬目的地を複数記載できる?
こちらの疑問は収集運搬業者が複数の処分場に運搬している時に、収集運搬契約にまとめて記載して1枚で締結させたいというものです。このような場合、関係者(委託者と受託者)が明確であり委託契約している内容の範囲内ならば、運搬先が複数になってもまとめることができます。注意点としては、収集運搬業者の許可範囲と期限をきちんと守ることで、特に許可範囲外の依頼には気を付けておきましょう。
②積み替え保管する場合契約書はまとめられる?
こちらの疑問は、複数の収集運搬業者が1つの保管場所に運搬する時に、全ての業者と契約書を締結させなければいけないのかということです。収集運搬業者に積み替え保管の許可がないことでこのような状況になりますが、複数の業者が関与している時点で契約書をまとめることはできません。これは先ほども紹介した、必ず二者契約を結ぶということに反するためです。
まとめ
今回は産業廃棄物収集運搬業の契約書に関して紹介してきましたが、明確な契約と詳しい記載が必要なことが分かりました。特に委託契約は記載内容が漏れているとトラブルになる可能性もあるので、行政書士に依頼する業者も多いです。委託契約書の作成を依頼したいという方は、ぜひ伊橋行政書士法務事務所までご連絡ください。